遺言できる人、するタイミング

遺言ができない人もいる

遺言をできる人

 枕元に家族を呼び寄せ、もうろうとした意識の中で最後の言葉を・・という場面はあくまでドラマの中の話です。

 普通、そのような状況になったらもうすでに
「遺言能力はない」ことが多いのです。

 では、遺言ができる条件、能力とはどのようなものでしょうか。

①満15歳以上であること 
②意思能力があること
 この2つを満たしていなくてはなりません。
未成年者であっても15歳以上なら遺言することはできますが、親権者が代わって遺言をすることは許されません。
 あくまでも、「本人」が「自分の意思に基づいて」しなければならないのです。

 また、「意思能力」とは自分が何をしようとしているかを認識でき、その結果についてわかる能力があるということです。
 認知症などで物事の意味がわからなくなった人は原則として遺言をすることができないのです。

認知症の状態で遺言をすると無効?

遺言の知識(知能評価スケール)

 しかし実際、認知症の症状が出始めてから遺言の作成を希望する、ということもあるでしょう。

 たとえ認知症であっても、意思能力を回復している状態の時に遺言をすれば有効になることがありえます。
 ただし、そのような状況で作成された遺言は、(特に自筆証書遺言の場合)、遺言者の死亡後に有効性が争いになる可能性がでてきます。

 裁判所が有効性を判断する場合は次のような点を検証することとなります。

①認知症の程度、内容
②遺言者が遺言をするに至った経緯
③遺言書作成時の状況
④その遺言の内容が複雑なものかどうか

 認知症がどの程度進行しているかの判断基準としては「長谷川式知能評価スケール」というものがあります。
 これは、30点満点の簡単な質問形式のテストを通じてそれを点数化するのですが、認知症の疑いがあるか、その程度はどのくらいなのかをはかることができます。
 医療福祉の現場でも広く使われており、認知症の疑いが出てくるとよく行われるテストですから、この点数の資料が残っていることにより遺言の有効性判断の参考資料になることもあります。

 右図のように、質問に対する応答の内容で点数化して認知症の程度を評価しますが、長谷川式で「4点」の判定だったが遺言が有効になった例もあり、「15点」の判定だったが無効になった例もあります。

長谷川式の点数 認知症の評価
20~30点 異常なし
16~19点 認知症(痴呆)の疑いあり
11~15点 中程度の認知症(痴呆)
5~10点 やや高度の認知症(痴呆)
0~4点 高度の認知症(痴呆)

 つまり、長谷川式スケールの点数だけで判定されるわけではなく、
「遺言内容が当時の状況に合わない」
「それまでの遺言と異なる」

などの事情があれば無効になることがあります。

 逆に点数が低くても
「看護師と会話ができていた旨の看護日誌が残っていた」
などという事情で有効となることがあるということです。

 有効無効の判断は結局のところケースバイケースと言わざるを得ません。
グレーゾーンに入ってから遺言をすることは覆されるリスクも大きいことは覚悟しなくてはならないでしょう。

遺言をするべきタイミングとは

 ここまでお読みになっておわかりかと思いますが、遺言というのは、書く内容もさることながら
「書くタイミング」というのが非常に大切なのです。

 どんなにすばらしい財産分けの方法を考えてもそれを有効な遺言として残さなければ子孫が多大な労力、費用を使って遺産分割をしなければならないことになります。

遺言の知識(油断大敵)
遺言の知識(元気なうちに)

 年齢がまだ若いから早すぎるということはありません。

 「母は昔から家は私にあげると言っていたのに、もう認知症が出始めていて・・」という例をたくさん見ている私たちだからこそ「早すぎる?」というくらいの時期でも遺言をおすすめしたいのです。
 遺言というのは内容を変えたければ後から何度でも書き直しができます。
 財産の一部のみ遺言であげる先を決めても構いませんし、遺言に書いた財産はもう使えなくなるというわけでもありません。
 ですから、後からもし親族の人間関係などに変化があればその時は書き直せばよいのです。

 要するに、「この財産の行く末はこうしたい!」と意思が定まった時がベストタイミングと言っていいでしょう。

・遺言をしなかった場合、どんなことになる? → 「遺言がないとどうなるか」
・作ってみたいけど、どんな形式にすればよいの? → 「遺言書の種類と特徴」
・私には遺言、必要ですか? → 「遺言必要度チェック」
・自分で自宅で書いてみたい! → 「自筆証書遺言」
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