遺言書に何を書くか

まず財産を洗い出し、整理する

遺言の知識(財産リストアップ)

 自分で遺言の文案を作ろうと思った時、意外と迷うのが
「何をどう書けばよいのか」
ということです。

 財産の全体を把握した上で、長男にはこれ、次男にはこれ、と配分を考えていく方がバランスが取れます。
 いきなり書き始めるのではなく事前準備として財産をリストアップしましょう。
どんな種類のものがあるか、どのくらいの価値があるかを自分でも整理する必要があるのです。

 どんなものが自分の死後、相続財産となるのかはこちらのページをご覧ください。→ 遺産とは

これだけは必ず遺言書に書きましょう!

①渡す相手の特定と財産の特定

遺言の知識(渡す物、人の特定)

 不動産を多く持っている方などは特に「あげるのはどの不動産なのか」という特定の仕方に気をつけなくてはなりません。

 不動産を特定するには登記簿を見ながら書くのが一番です。
登記簿は法務局に行けば誰でも取得することができますし、コンピュータでの取得もできます。
 遺言の前には必ず最新の登記簿を取得することをおすすめします。
 特に不動産購入当時が何十年も前という場合は特に、地名の表示の仕方や権利関係が現在のそれとは変わっていることがあります。
具体的には登記簿の一番最初、表題部という部分に着目し、

土地であれば「所在」「地番」「地目」「地積」
建物であれば「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」

の欄をきっちり全部書き、渡したい対象物があいまいにならないようにしましょう。

 また、渡す相手方については自分との関係(長男等)、氏名、生年月日で特定しましょう。

②後から他の遺産が出てきた時の渡し先

遺言の知識(財産もれ)

 すべての財産を把握したつもりだったけれど・・
・忘れていた通帳が出てきた
・道路部分の小さい土地を忘れていた
 など、記載もれは必ず起こりうることです。

 自分が生きている間に気付けば遺言書の書き直しもできます。
しかし亡くなってからではどうにもなりません。

 これを最初から想定の範囲内とし、後から財産が出てきた時の手当てをしておきましょう。

 「この遺言書に記載のない私名義の財産はすべて〇○に相続させる」としておけば相続人が困ることがありません。

③渡したい相手が先に亡くなった時の次順位

遺言の知識(渡す相手が死亡の場合)

 相続させたい人が、自分より必ずしも長生きするとは限りません。
最悪、仮に先に亡くなってしまった場合の財産の行き先も考えておきましょう。

 遺言者Aが仮に「長男Bに相続させる」と遺言したとして、BがAより先に死亡したらどうなるでしょうか?
 Bの子Cが当然にその財産を相続できるわけではありません。

 長男死亡の場合、孫に相続させたいのであればこのように書きます。
「長男Bが自分より先に死亡していた場合は長男の娘Cに相続させる」
こうしておかなければCに財産を渡すことはできないことに注意が必要なのです。

④遺言執行者の指定およびその人が先に亡くなった時の次順位

遺言の知識(遺言執行者)

 遺言の効力を最大限に生かすために忘れてはいけないことがあります。
「遺言執行者」という役職を遺言の中で選ぶことです。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために行動する権限を持つ人です。

 遺言に書かれた財産を実際に受け取るまでには具体的に何をすればよいでしょう。

・預金については銀行窓口に行って解約手続を行う
・不動産については法務局に行って登記手続を行う
・株式等は証券会社と郵送でやり取りを行う

 これらの手続窓口は、誰が行っても応じてくれるわけではありません。
正当な法的権限を持った人がいないと書式のフォーマットさえくれないのです。

 いくらすばらしい遺言があっても、遺言執行者が指定されていなければ相続人全員で手続きをしなくてはならなくなります。
 「反対する相続人がいて手続きができない」となったら、そもそも遺言を書いた意味がなくなってしまいます。

 そして、遺言執行者がもし自分より先に亡くなったら?ということも想定しておきましょう。
「遺言執行者Aが自分より先に死亡した場合はBを指定する」と書けば万全です。

⑤紛争防止のための「付言」

遺言の知識(付言)

   遺言書というと一般的には、財産の分け方が機械的に書いてある、というイメージですね。
しかし大切なのは「分配方法のしっかりとした理由づけ」です。
親から子への愛情、気遣いが兄弟平等にされているかどうかも成功の大きなポイントになります。

  相続争いというのは「お金に困っているから少しでも多くもらいたい」という現実的な事情だけではありません。
「親の愛情を感じられなかった、他の兄弟と差別されていた」と思う気持ちが争いにつながるのです。

 ですから、ぜひ盛り込んでおきたいのが

・介護や同居をしてくれた家族への感謝の気持ち
・相続財産をもらえない、または相続分を少なくした子供には理由など
・各人への気持ちのこもったメッセージ

といった内容です。

 遺言の本筋を補足するこのような言葉は「付言」というタイトルで遺言の最後に書くことが普通です。
故人の気持ちがきちんと伝わればそれだけで兄弟の不満をやわらげ、紛争の防止になることもあるはずですので丁寧に考えて書きましょう。

「遺留分」への配慮を!!

遺言の知識(遺留分を配慮)

 なお、もちろん自分の財産をあげたい人にあげる、このこと自体は構わないのですが民法には「遺留分」という大切な決まりがあります。

 遺留分とは
「法定相続人であれば最低限これだけは取り分を主張できる」
と法律で決められた割合のことです。

 たとえば愛人に全財産を遺贈することはできるか?答えはYESです。
「愛人に全部」「長男に全部」などの遺言自体は無効ではありません。
しかし、これは他の相続人の遺留分を侵害していることになります。

 もし、他の相続人が異議を述べない、または遺留分という制度自体を知らないのであれば遺言書のままの割合で相続してかまいません。
 しかし、遺留分を持つ子が自分の権利を主張すればどうなるでしょう。

 後でその部分は戻さなければならないことになりますから、遺言があることがかえってトラブルの原因になります。

 → 各相続人の詳しい割合など詳しくはこちら 「遺留分」 

 せっかく紛争防止のために遺言を作ったのに、遺留分への配慮がなかったばかりに裁判などが起こっては本末転倒です。よく考えた内容にしましょう。

・遺言は何歳くらいでするのがベスト? → 「遺言できる人、するタイミング」
・私には遺言、必要ですか? → 「遺言必要度チェック」
・遺言をしなかった場合、どんなことになる? → 「遺言がないとどうなるか」
・作ってみたいけど、どんな形式にすればよいの? → 「遺言書の種類と特徴」
・自分で自宅で書いてみたい! → 「自筆証書遺言」
・やっぱり作るなら公証役場できちんと! → 「公正証書遺言」
・後で気が変わったら?? → 「遺言の変更」
・遺言の内容に不満がある! → 「遺留分」